食品中のアクリルアミド
2016/11/12
2002年にスウェーデン食品庁とストックホルム大学が、遺伝性発がん物質である
アクリルアミドが、アミノ酸や糖類を多く含む食品を高温で加熱(焼いたり、揚げたり)
した加工品に高濃度で含まれていることを発表しました。
ポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなどに多く含まれていることが判明しています。
アクリルアミドとは
1950年代から工業用途で用いられている化学物質で、大量に食べたり、吸ったりした場合、
神経障害を起こします。
食品を加熱調理する過程において、食品中では様々な化学物質が生成されたり、分解されたりしています。このとき生成する化学物質の中には、食品を食べやすくする、好ましい風味を醸し出す、保存性を高めるなど有用な効果をもたらすものがある一方で、私たちの健康に悪影響をもたらす可能性のあるものが副産物としてできることがあります。そのような加熱食品に含まれる有害化学物質のひとつが「アクリルアミド」です。
工業用途の有害化学物質が、食品中に含まれるという衝撃
衝撃的な発表でしたが、これらの食品は販売禁止にはなっていません。
それは、昔から人々が食べてきた食品であり、それなりの栄養価をもつ食品です。
そのため、食品中のアクリルアミド含有量が少なくなるような製法の開発などの
取り組みが進められています。
アクリルアミドの摂取源
食品中のアクリルアミドは、料理の過程で、焼く、炒めるなどの加熱調理の過程で発生します。
- 「揚げる」「焼く」「炒める」「焙る」など120℃以上の高温で加熱されることにより、化学反応によって発生します。
- 食材自体の水分量が少なくなると、アクリルアミドができやすくなるといわれています。
- 「煮る」「蒸す」「ゆでる」など水を利用した調理ではほとんど発生しません。
摂取量を比べてみると、ニュースなどの報道では、ポテトスナックなどのお菓子類が取り上げられていたので、ポテト製品には多いイメージがありますが、高温で炒める時間の長い野菜類が一番多い結果になっています。
アクリルアミドの摂取源(日本人の平均摂取量は、0.240μg/kg体重/日)
摂取源 | 割合 | 具体例 |
高温調理した野菜 | 56% | 炒めたもやし、炒めた玉ねぎ、炒めた蓮こん、炒めたキャベツ、フライドポテトなど |
飲料 | 17% | コーヒー、緑茶、ウーロン茶、麦茶等 |
菓子類・糖類 | 16% | ポテトスナック、小麦系菓子類、米菓類等 |
穀類 | 5% | パン類等 |
その他 | 6% | カレールウ等 |
アクリルアミドの発がん性
アクリルアミドは動物実験では「遺伝毒性のある発がん物質」とされていますが、これはアクリルアミドによって細胞の遺伝子が傷つけられ発がんすると考えられています。
人の場合でも同様に、遺伝子を傷つけられる可能性があるため「人に対しておそらく発がん性がある物質」とされていますが、はっきりとした発がんデータは現在のところはありません。
しかし、ある程度の懸念があることから、なるべく摂取量を抑えることは、がん予防に関しては一定のリスク軽減効果があります。
高温調理した野菜類にアクリルアミドの割合が多いことはわかりましたが、多くの野菜類には、がん予防効果があり、日々の食生活を考えると、現実には、まったくなくすことはできません。
では、具体的にどのようなことに気をつければ、摂取量を少なくする事ができるのでしょうか?
アクリルアミドを低減する調理方法の工夫は
食材の保存、準備
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ジャガイモは常温で保存する
ジャガイモを冷蔵保存した場合、還元糖が増えます。
還元糖が増えたジャガイモを高温加熱することによって、アクリルアミドができやすい状態になります。 -
野菜類、芋類は、切った後、加熱前に水でさらしたり、下ゆでをする
水にさらしたりすると、炒めたり揚げたりしたときにアクリルアミドに変わる成分(アスパラギンや還元糖)が食材の表面から洗い流され、アクリルアミドができにくくなります。
加熱方法を工夫する
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食材を焦がさない
加熱温度が高かったり、加熱時間が長いと、アクリルアミドの濃度が高くなります。
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炒める時は、食材をよく混ぜる、火力は弱め
火力を弱める事で食材が高温になるのを防いで、混ぜることによって、食材の一部が高温になったり、焦げたりするのを防ぎます。
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炒める時間を短くする
水を使った料理法(「煮る」「蒸す」「ゆでる」)では食材が120℃以上の高温にならないため、アクリルアミドはほとんど発生しません。
蒸し煮など料理方法を工夫することによって、炒める時間を短縮します。