がんは遺伝する病気なのか?
2016/10/10
がんは、細胞が遺伝子情報をコピーする時に、ミスコピーが発生し、それが増殖して
がん細胞になるという記事を「がんとはどのような病気なのか?」で書きました。
遺伝子情報と言うと、親から子へと引き継がれるのも遺伝子情報です。
では、がんも遺伝するのでしょうか?
がんの中には、遺伝するがんもあるが、実際には、親から子へ遺伝するがんは少ない。
遺伝と言うのは、正確な表現ではありません。
遺伝子の病気と「遺伝病」は違う。
がんは「がん遺伝子」と言う言葉から、親から子へ遺伝する、いわゆる「遺伝病」思っている人もいると思いますが、がんは「遺伝病」ではありません。
がん遺伝子は、正常な細胞にも存在する。
がん研究の中で、発見当時、がん特有の遺伝子だと思われていたがん遺伝子
(オンコジーン、oncogene)は、その後の研究で、正常な細胞にも存在する事が
わかりました。
遺伝子情報は、親から子へ引き継がれますが、がん遺伝子があるからと言って、
必ずがんになるというものではありません。
正常細胞の中にある、がん遺伝子が何らかの理由によって傷つき、がん細胞になる
と考えられます。
がんになる原因には、さまざまが要因があり、それが遺伝によるものなのか、環境に
起因したものなのかを判断するのは、非常に困難なのですが、2000年に北欧で双子を
対象に研究され発表された結果では、約9万人(4万5千組)の内、1万人ががんに
なりましたが、双子が両方、同じがんになった割合は10%以下でした。
この結果からも、遺伝的に同じがんになる確率は低いと言えます。
遺伝性がみられるがんは...
また、遺伝的に関連があると見られるのは、「前立腺がん」、「大腸がん」、「乳がん」
の3つという結果になっています。
最新の調査結果(米国医師会誌「JAMA」2016年1月5日号(Vol 315, No. 1)に掲載)
では、遺伝性の強いがんとして「皮膚がん」、「前立腺がん」、ある程度遺伝性がみられる
としているのは「卵巣がん」、「腎臓がん」、「乳がん」、「子宮体がん」となっています。
がんの原因で「遺伝」の割合は5パーセント
1996年に米ハーバード大学がまとめた「がんの原因」で「遺伝」の割合は5%でした。
1位は「たばこ」と「食事」で30%
以下、「運動不足」、「職業」、「遺伝」、「ウィルス・細菌」が各5%となっています。
国立がん研究センター 1996年 米ハーバード大学 がんの原因(米国の場合) 疫学研究に基づいた推定(円グラフ)